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トップページ >> 研究紹介 >> PIM測定の意義

PIMとは受動回路が有する非線形性に起因して生ずる相互変調ひずみのことです.問題がもっとも顕著に現れるのは,送受信で異なる周波数を用いた通信システムであり,送受信で共用しなければならないデバイスが存在する場合です.たとえば周波数f1,f2なる送信波2波が相互変調したことにより周波数f3なる新たなひずみ波が発生したとします.受信波の周波数がf4とすると,f3=f4となった場合に,ひずみ波(f3)と受信波(f4)を送受信分離フィルタで分離することができなくなります.すなわち受信系に障害が発生する可能性が生じます.これが「PIMが受信帯に落ち込んだ場合」です.なおPIMが受信帯に落ち込めば必ず問題になるわけではなく,観測対象となる次数も深刻度を左右します.相互変調ひずみ(IM)は次数が大きいほど原理的にレベルが低くなりますので,関係するPIMが大きい次数となる場合,すなわち送信帯と受信帯が離れれば離れるほど問題の深刻度は低下していきます.つまり受信帯にIMが落ちなければPIMは無視して良く,受信帯にIMが落ちる場合でもその次数が高い場合には深刻な問題とはならないということになります.5次,7次,9次,11次など高次IMが受信帯に妨害を与えるような製品は相当質が悪く,PIMよりもそれが作られるような製造環境を問題とすべきかも知れません.
一方で,次の様な見方ができます.PIMは回路の電磁気的非線形性に敏感に反応する現象であり,PIMが高い装置について,「装置を構成する材料に問題がある」か「部材の組み立て法等に問題がある」かのいずれかを暗に示唆する指標,と考える訳です.前者の材料的な視点は製品仕様,すなわち,回線設計により決定される問題であり,仕様を満すのであれば,低PIMといわれる銀であろうが,PIMが高いといわれる磁性体であろうが問題はありません.一方で後者はアセンブリの善し悪しを判断する材料としてPIMが用いられている例であり,受信帯にPIMが落ちない場合でも要求されるべき特性となるわけです.
アセンブリが問題となる例として,たとえば「ラフコンタクト」をあげることができます.これに対し,これまでのPIMに関する文献には,PIMを抑制するためのノウハウとして「ラフコンタクトをなくすこと」などがしばしば記載されていますが,非常に妙なアドバイスです.ラフコンタクトがある状態で製品を積極的に出荷することなどありえませんし,ケーブル接続に関するコネクタのトルク管理は規格文書に挙げられるほど一般的な事柄です.つまり適当な表現とは,実は「ラフコンタクトを探すにはPIMを利用するとよい」という記述なのです.
ラフコンタクト以外にも,PIMによって酸化や腐食などによる各種接触不良および将来的な可能性を診断・検出することができます.このように「PIMが受信帯域内に落ちないので問題ない」と思われる場合でも,品質保証の観点から見たPIMは重要なパラメータと言えるわけです.目標仕様に対して使用材料が適切か否かを判断する場合には,受信帯域に相当する次数のPIMによる議論をすればよく,アセンブリの状態など製品品質を確かめようとするのであれば,可能な限り感度を高くとれる低次PIMを評価指標とすべきと考えられます.特に周波数依存性の少ないデバイスを評価する場合には,IECの規格で推奨されているように,3次PIM(43dB2波入力)で評価することが望ましいと言えます.
低次数のPIMが測定できるにも関わらず高次のPIM,すなわち5次,7次,9次PIMなどで特性の優劣を議論することは,あえて感度の低い領域で議論を展開することになり,効率が悪くなります.送信周波数が近接する場合には3次PIM,大きく離れた場合には2次PIMが上記不良を検出するために有効といえるでしょう.PIMは微妙な状態変化を非線形性という形で高感度に検出できる有力な手段です.その意味をよく理解して,有効に利用すべきと考えられます.
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